今夜はニューヨークの郊外で行われた、立川志の輔独演会へ行ってきた。
会場はパフォーミング・アーツセンターといって、市街中心地にあるなかなか立派なホール。椅子も非常にゆったりとしていて、長時間座っていても疲れなかった。
もちろん日本のような高座は望めないが、それでも舞台からちょっと高くなった台に座布団を敷いて、そこで落語を出来るようなステージ設定になっていた。
昨日はデトロイトでの公演だったそうで、志の輔師はブロードウェイによくミュージカルを見に来ているとの事。
まずは前座で志の春さん。師匠の3番弟子だそうですが、なかなか口跡もよく、「錦明竹」をきっちりと演じて笑いをとっていた。聞けば子供の頃当地で住んでいた?とかで、いわば「故郷へ錦」を飾ったことになる。しかもアメリカの超一流大学を出て、日本の某総合商社で勤務していたというなかなかユニークな経歴の人だった。
そして今夜の主役、志の輔師登場。観客の反応をうかがっていたのかたっぷりとマクラを語り、ちょっとベタな?小噺で笑いを取っていた。今日は家族連れが多かったので良かったと思う。そして自作の噺「親の顔」。これは家族向けに配慮した噺のチョイス、かもしれない。面白かった。
そして休憩無しでジャグラーのダメじゃん小出氏。なかなか脱力系の笑いだが、目先が変わるし楽しい色物だった。
そしてトリはもちろん志の輔師再登場で「妾馬(八五郎出世)」。と言ってもストーリーは、通常と異なるように思われる。ここにも志の輔流の創意工夫があるのかもしれない。八五郎の憎めないキャラをはじめ、出てくる人物が皆よい人で、観客もじっくり聴き込んでいた。
サゲを言い終わって拍手が来ても緞帳が下りるわけではなく、そのあと師匠からちょっとしたトークがあって、最後に出演者総出で三本締めにて終わった。
まぁ落語にそれほど精通している観客ではないし、司会の人もいるし、いろんな意味でユニークではあったが、くせのある客層ではないので、素直に笑える良い会だったと思う。
しかし、志の輔師匠を聴いたのは一体何年ぶりだろう?もはや大御所の風格が出てきている。声はかなり渋いが聞き取りにくいわけではなく、むしろ聴いていて心地よい。ところどころ、師匠の立川談志・立川流家元を彷彿させる言い回しなどもあって、良いところがしっかりと継承されているんだと思った。
マニアックに走らずそれでいて単なるタレントでなく、こうして古典も新作も出来るオールラウンドなプレイヤーなのだから、現在の人気も改めて納得できるものでした。非常に楽しめる結構な会だった。
落語と言うのは、それそのものに力がある芸能だと思いますけど、力のある演者がやると余計にパワーを感じます。そして聴き終ったあとは満足感だけでなく、なんともいえない力を授かったような気にもさせてもらえます。
落語は、特に古典は「古い噺をそのまま演じているだけ」と錯覚する人も多いと思いますが、決してそんなことはないですね。そんな人も中にはいるんでしょうが、やっぱり一から創り上げていくもんだと思います。そのフォーマットを借りているだけで、基本的には演者の力量ですからね。面白い噺だって、ダメな人がやったらやっぱりダメですからね。
2006年6月5日月曜日
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