2011年8月25日木曜日

言霊信仰?


去年のFIFAワールドカップが開幕する前、日本代表「岡田ジャパン」の評判は最悪でした。
岡田監督自身が掲げていた「ベスト4進出」という大きな目標とは裏腹に、チームの調子はどん底でしたからね。


サッカー評論家や、記者たちの評価もきわめて低く、悲観的なムードが漂っていました
ベスト4はおろか、決勝トーナメント進出も夢のまた夢。
いや、一次リーグ1勝だっておぼつかない。
いやいや、3戦全敗はもう戦わずして決まっている、というムードが濃厚でしたね。
実際、そう断言していた人達も多かったです。

ファンの評価も、それに影響されていたのか最悪で、大会前に岡ちゃんを更迭しろ、という強硬な意見を述べる人も多かった。
これほど期待されていない代表チームも珍しいな、という印象でしたね。


日本と同じグループに入ったのが強豪国揃いでしたから、そういう悲観的な予想も無理からぬところではありましたけど、そこまで悪くいう事も無いだろう、とは思っていました。
でも、そんな私でさえも、開幕前の予想は1分け2敗、勝ち点1でグループリーグ敗退、というのが率直な予想ではありました。


ところが、フタを開けてみれば日本代表は絶好調。
1次リーグで強豪のカメルーンを破る金星を挙げると、準優勝国のオランダ相手にも大健闘。この試合こそ0-1で敗れはしたものの、続くデンマーク戦を圧倒的な攻撃力で大勝し、まさかの決勝T進出、世界のべスト16入りを遂げたのです。
専門家の予想なんて、本当にアテにならないなぁと改めて実感しましたね。


さて、開幕を目前に控えたラグビーW杯に臨む、我らがカーワン・ジャパンについてはどうでしょうかね。
正直言うと、カナダ相手に1勝するのが関の山、というのが、現時点での公平な評価だと私は思っています。


ジョン・カーワンHCは本大会3勝、つまりベスト8進出を目標に掲げてますが、これは岡ちゃんで言うところの「ベスト4」とさのみ変わらない、言ってみれば非現実的な目標であるといえます。
それは、今までの実績を見れば明らかでしょう。
2007年のフランス大会では、カナダ相手にドローへ持ち込んだのが精一杯の1分け3敗。
過去全ての大会での通算勝利が、わずかに「1」。
今大会で2勝以上する、と断言できるだけの根拠を、今の日本代表は持ち合わせていないと思います。

日本のラグビー界自体が上げ潮ムードなら、そういう意見があっても多少は理解出来ます。
しかし、ラグビー人気は長期低迷。
スタジアムには閑古鳥が鳴き、競技人口も激減していると聞きます。
カーワンは、外国出身の選手を多数入れてなんとか体裁を整えてはいるものの、もし一部のファンが望むような日本人選手だけの編成を行えば、おそらく戦わずして全敗は確定的でしょう。
それほど、日本ラグビーの実力と、国際的な地位が落ちていると言えるのです。


もちろん、指揮官が「なんとか1勝したいです~」なんて、シケた事を言うわけもないのでそれ自体はわかります。
ピッチ上で選手たちは、文字通り身体を張って戦い続けているわけですからね。
戦う前に負けること考える馬鹿いるかよ、っていう、一種の猪木イズムに通じるものもありますね。
ラグビーライター達もその辺りの事情を汲んでか、あまり悲観的な意見は(少なくとも表向きには)聞こえてこないですね。


ここで問題、というか興味深いのは、そういった発言を受け止める側であるラグビーファンの反応ですね。
内心では、そんなに勝てるわけないだろう...と思っている方が多数派なのではないでしょうか。

しかし、あまりそういうネガティブな反応は聞こえてこない。
そういう事を言ってはいけない、いまはファンも前向きな発言をすべきだ、という空気を感じますね。
まるで、悪いことを言えばそれが現実化してしまうのではないか、とも言わんばかりの勢いです。


逆に言えば、それだけラグビー界全体が追い詰められている、とも言えます。
これ以上負けてしまえば、もう日本のラグビーは持ちこたえられないのでは無いか、という悲壮感。
2019年W杯の日本開催を8年後に控えて、ここで白星を挙げないことには、日本のラグビーは2019年を前に息の根を止められてしまうのではないか...という焦燥感ですね。
国内ラグビーの人気が高かった20年前なら、代表チームが国際試合で惨敗を繰り返しても、大学ラグビーなどの勝敗に一喜一憂して楽しむことも可能でした。
それ自体は、日本ラグビーが世界のヒノキ舞台では通用しないという、辛い現実に目を背けていただけですが、それが許されるだけの人気があったんですよね。
しかし、そういう人気はもうどこにも存在しません。全ては過去の栄光に過ぎない。

だからファンにもまた、余裕が無い。ここで全敗したらどうなるか、なんて考えたくも無い。
だからこれ以上、悪いことが起きないで欲しい。
だからこれ以上、悪いことが起きると予想するのはやめよう。言うのもやめにしよう。


良い事を言い続ければ、必ずいいことがおきる。
日本は勝つ、必ず勝つ。
そうなってくれれば、もういう事なしなんですけどね。


ちょっと、第二次大戦末期にムードが似ているような気がするけどw

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