2012年1月4日水曜日

外山滋比古著作集 2 近代読者論

外山滋比古著作集 2近代読者論

垂水書房版の『近代読者論』が刊行されたのは昭和38年であった。そのとき出版社の人が書店まわりをしたところ、書店のおやじさんに、「書名に誤植ができてしまって……」と慰められたという。数多ある「読書論」の類とちがって、「読者論」はそれほど知名度が低かった、いや、存在しなかったといってもよいだろう。いまだに、『近代読書論』の著者と紹介されることがあるという。

むかしは文学も音読され、共同体の財産であった。作者も読者も独立しておらず、交換できるものであった。それが活字本以後、作者と読者はバラバラになり、長いあいだ、読者は作者よりも一段低いレヴェルに落とされてきた。

しかし、テクストをあるがままに(作者の意図のままに)理解することは可能だろうか? この疑問から、〈近代読者〉が誕生する。読者は作者とは違う読みを実践し、原テクストの〈異本〉を創り出すのである。ここに至って、読者は作者から独立し、〈読み〉をとおして創造に参加することになる。世界に先駆けて、ユニークな〈受容理論〉を展開した画期的な成果。



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