<落語>フリーな門風 弟子飛躍 雲助が噺家生活45周年
古典落語の大ベテラン、五街道雲助が今年で噺家(はなしか)生活四十五周年を迎える。三人の弟子の桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)、隅田川馬石(ばせき)、蜃気楼龍玉(しんきろうりゅうぎょく)の活躍もめざましい。師弟による三遊亭円朝の人情噺のリレー口演は十八番(おはこ)。三月には連続通し口演の企画もある。雲助に新年の抱負を聞いた。(田中冴子)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2013011402000161.html
良いですね「お富与三郎」。
歌舞伎で言えば「与話情浮名横櫛」。
歌で言うと、春日八郎の『お富さん』ですw
また市川雷蔵主演で映画化もされていまして、以前にスカパーで観ました。
VIDEO
雲助さんの師匠である、十代目金原亭馬生もこの「お富与三郎」を口演していました。
テープでは聴いたことがあるんですけど、残念ながら私は馬生に間に合わず、実際に彼の高座を見たことがありません。
まぁ、現代ではなかなか受けにくい噺ですからね。
ただ、かつてはこういう人情噺の続き物をやるのが、大真打の必須条件でもありました。
作家の正岡容、桂米朝や先日亡くなった小沢昭一さんの師匠として今では有名になっていますけど、この正岡が若いころ、三代目三遊亭円馬の「お富与三郎」を大阪の寄席で聴いたときの感激を文章にしています。
正岡自身、この名人と言われた円馬に弟子入りしていたんですが「大阪に住んでいた時の最高の喜びは、桂春団治(初代)の爆笑落語を聴いたことと、そして三代目円馬の『お富与三郎』の続き物を聴けたことだ」だと書いています。
こういう、続き物の長編にはヤマ場があって、そこは誰が演じても面白い。
しかし問題は「ダレ場」と言って、ストーリー上は語らないといけないんだけど、聴かせるのには骨がかかるつまらない部分を、どうやって処理するか。
ここを上手く語る人が、名人上手の条件だったと言います。
そして、もう一つ難しいのはどこで噺を区切るか。
数日間の口演ですから噺を途中で中断しないといけませんが、このキレ場を上手く切らないと
「ああ、明日も聴きに来ないとな」
という気分にはなれず、翌日の寄席の客入りに大きく影響したようです。
その点、三代目円馬はこの切れ場が実に巧かったと言います。
さんざん話を盛り上げておいて、あるところで突然、新たな登場人物が出てくる。
あれ、一体誰かな?聴衆に期待を抱かせたところで
「…誰だか、この続きは明日の晩にやります」
こう言い残して、あっと言う間に舞台のそでへと引っ込んでしまったそうです。
あっけにとられた観客は一瞬ポカンとしていますが、ふっと我にかえってワーッと万雷の拍手を送ったそうです。
雲助さんの「お富与三郎」も、そんな鮮やかなキレのある高座を見せてくれると思いますね。
VIDEO