1895年に、イングランド北部の有力ラグビークラブがRFUから分裂し、北部ユニオンを設立した。
北部ユニオンはプロフェッショナルを認め、1チーム13名など独自のルールを採用して、人気を集めていく。
これが20世紀に入ってから南半球にも波及し、現在の13人制ラグビーリーグとして、独自の発展を遂げていった。
私が海外ラグビーにはまった1980年代、ラグビーユニオンはもちろんアマチュアの時代だった。
そしてオールブラックスやワラビーズなどの有力選手が、続々とリーグに引き抜かれて転向を果たしていくニュースが「ラグビーマガジン」などをにぎわせた。
それで私が最初に誤解したのは「リーグ=ラグビーユニオンのプロ興行」だという図式だった。
リーグは当時「プロラグビー」などと日本で呼ばれもしたので、余計にそういう誤解が生まれる土壌はあったと思う。
だが、ラグマガも当時はけっこうジャーナリスティックな部分もあり、何度かリーグ特集を組んだりしていた。
そこで分かったのは、リーグと言うのはラグビーとはまた別の競技であり、プロを頂点としてアマチュアも存在する整備された機構を形成している、ということであった。
そこから私もリーグに興味を持ち始めたのである。
リーグ・ユニオン分裂からちょうど100年目の1995年、ユニオンも遂にオープン化に踏み切り、プロ時代へと突入。
ここで流れは完全に変わり、今度はユニオンがリーグの有力選手を獲得する時代が突入した。ウェンデル・セイラー、マット・ロジャース、そしてジェイソン・ロビンソン…
この流れは現在でも続いており、ここ1週間でも英国・豪州の有力リーグ選手が、ユニオンへ転向するニュースが海外のスポーツメディアをにぎわせている。
ユニオンがさんざん否定していたアマ主義が崩れたのだから、このラグビー戦争、本来ならリーグに軍配が挙がっていると言って良いはずである。
だが、実情は逆だ。ワールドカップを頂点に成長を続けるユニオンに対し、リーグは相変わらず「豪州東部と英国北部の人気スポーツ」でしかない。
しかもこれまでの意趣返しのごとく、せっかく育てた有力選手をどんどん持っていかれてしまう。トップ選手にとっては、市場の小さいリーグはあまり魅力的な職場ではないようだ。ビジネス的に見ると、現在では明らかにユニオンに軍配が挙がると言えるだろう。
リーグ側の対抗策としては、高額な契約金を用意して選手を引き止めるなどの措置も考えられるが、それでは本質的な解決にならない。
結局は、リーグと言う競技のパイをもっと大きくしていくしかないだろう。
でも、どうやって大きくする?これが難題だ。豪州や英国、またニュージーランド以外では、リーグは一般的には知られていない。存在が知られていないものを根付かせるのには、気の遠くなるような時間がかかるはずである。
今年の6ネーションズで、イングランド代表デビューを果たしたアンディ・ファレル(サラセンズ)は、元リーグ全英代表主将のスーパースターだった。
ファレルは、不慣れなCTBのポジションをプレーしたことで精彩を欠き、代表OBや一部ファンからも批判を浴びた。しかし、不振に終わったイングランドの全責任をファレルに背負わせるのは無茶である。結局のところ、彼はスケープゴートにされている感が強い。そこにリーグ出身者へ対する偏向を感じる人も多いのだ。
また彼を擁護したショーン・エドワーズ(ワスプスコーチ)も、元はリーグの名スクラムハーフであり、ファレルのチームメイトだった。リーグとユニオン、戦いはいまだ終わっていないのである。
本稿の初出:『楽苦美愛』 http://sns.rugbyeye.net/
【国際ラグビー情報ノート】
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