2007年3月25日日曜日

新ウェンブリー、遂に完成

のびのびになっていた「フットボールの聖地」、英国ロンドンにある新ウェンブリー・スタジアムの改築工事が遂に完成。イングランドU21代表が、イタリアU21代表を迎えてきのう試合を行った。
結果は3-3のドローに終わったが、スタンドには5万5千人超の大観衆が詰めかけ、新たな代表本拠地でのフットボール観戦を楽しんだ。

これでもし問題が無ければ春のFAカップ決勝、そして夏にはラグビーリーグのチャレンジカップ決勝が行われるはずである。

http://www.wembleystadium.com/


2007年3月23日金曜日

「百年戦争」いまだ終わらず

1895年に、イングランド北部の有力ラグビークラブがRFUから分裂し、北部ユニオンを設立した。
北部ユニオンはプロフェッショナルを認め、1チーム13名など独自のルールを採用して、人気を集めていく。
これが20世紀に入ってから南半球にも波及し、現在の13人制ラグビーリーグとして、独自の発展を遂げていった。

私が海外ラグビーにはまった1980年代、ラグビーユニオンはもちろんアマチュアの時代だった。

そしてオールブラックスやワラビーズなどの有力選手が、続々とリーグに引き抜かれて転向を果たしていくニュースが「ラグビーマガジン」などをにぎわせた。

それで私が最初に誤解したのは「リーグ=ラグビーユニオンのプロ興行」だという図式だった。

リーグは当時「プロラグビー」などと日本で呼ばれもしたので、余計にそういう誤解が生まれる土壌はあったと思う。
だが、ラグマガも当時はけっこうジャーナリスティックな部分もあり、何度かリーグ特集を組んだりしていた。


そこで分かったのは、リーグと言うのはラグビーとはまた別の競技であり、プロを頂点としてアマチュアも存在する整備された機構を形成している、ということであった。
そこから私もリーグに興味を持ち始めたのである。

リーグ・ユニオン分裂からちょうど100年目の1995年、ユニオンも遂にオープン化に踏み切り、プロ時代へと突入。

ここで流れは完全に変わり、今度はユニオンがリーグの有力選手を獲得する時代が突入した。ウェンデル・セイラー、マット・ロジャース、そしてジェイソン・ロビンソン…
この流れは現在でも続いており、ここ1週間でも英国・豪州の有力リーグ選手が、ユニオンへ転向するニュースが海外のスポーツメディアをにぎわせている。

ユニオンがさんざん否定していたアマ主義が崩れたのだから、このラグビー戦争、本来ならリーグに軍配が挙がっていると言って良いはずである。

だが、実情は逆だ。ワールドカップを頂点に成長を続けるユニオンに対し、リーグは相変わらず「豪州東部と英国北部の人気スポーツ」でしかない。
しかもこれまでの意趣返しのごとく、せっかく育てた有力選手をどんどん持っていかれてしまう。トップ選手にとっては、市場の小さいリーグはあまり魅力的な職場ではないようだ。ビジネス的に見ると、現在では明らかにユニオンに軍配が挙がると言えるだろう。

リーグ側の対抗策としては、高額な契約金を用意して選手を引き止めるなどの措置も考えられるが、それでは本質的な解決にならない。

結局は、リーグと言う競技のパイをもっと大きくしていくしかないだろう。
でも、どうやって大きくする?これが難題だ。豪州や英国、またニュージーランド以外では、リーグは一般的には知られていない。存在が知られていないものを根付かせるのには、気の遠くなるような時間がかかるはずである。

今年の6ネーションズで、イングランド代表デビューを果たしたアンディ・ファレル(サラセンズ)は、元リーグ全英代表主将のスーパースターだった。

ファレルは、不慣れなCTBのポジションをプレーしたことで精彩を欠き、代表OBや一部ファンからも批判を浴びた。しかし、不振に終わったイングランドの全責任をファレルに背負わせるのは無茶である。結局のところ、彼はスケープゴートにされている感が強い。そこにリーグ出身者へ対する偏向を感じる人も多いのだ。

また彼を擁護したショーン・エドワーズ(ワスプスコーチ)も、元はリーグの名スクラムハーフであり、ファレルのチームメイトだった。リーグとユニオン、戦いはいまだ終わっていないのである。


本稿の初出:『楽苦美愛』 http://sns.rugbyeye.net/

【国際ラグビー情報ノート】


2007年3月19日月曜日

やってもうた

6ネーションズは土曜日で閉幕したが、各国の国内リーグ戦はいまだ進行中である。

イングランドのプレミアシップでは、ロンドン・アイリッシュとロンドン・ワスプスが対戦。この試合では、同リーグ史上最高となる22,600人の観衆が詰めかけた。

ゲームの内容も息詰まる接戦の展開となり、最後はアイリッシュが16-13で制している。

だが、この試合における最大のハイライトは勝敗ではない。

アイリッシュ所属のアルゼンチン代表FW、Juan Manuel Leguizamonの信じられないエラーにあった。
タッチライン際を快走したチームメイトからのパスを受けた彼は、フリーの状態でインゴールへ一直線。誰もがトライと思ったその瞬間、信じられないことが起こった。
自らのトライを祝うべくダイビングした瞬間にボールをこぼしてしまい、グラウンディングすることが出来なかったのだ。

チームが勝ったから良かったようなものの、さぞ肝を冷やしたに違いない。


本稿の初出:『楽苦美愛』 http://sns.rugbyeye.net/

【国際ラグビー情報ノート】

2007年3月15日木曜日

オー・カナダ (カナダのラグビーについて)

カナダと日本、戦前から交流のある「ラグビー・フレンド」であり、確かに良い対戦相手であると思う。

ただここで不思議なのは、どうしてカナダは、ラグビー大国にならなかった(なれなかった)だろうか、ということだ。
豪州、南ア、そしてNZと、他の英連邦系国家は多くがラグビー強国になった。英国との関係や人口を考えれば、カナダがこれらの国と同等のスーパーパワーに君臨しても不思議では無かったはずだ。
まぁその場合だと、日本は「ライバル」にはしてもらえないだろうが...


1991年に開催された第2回のワールドカップでは、カナダはかなり強い代表チームを送り込み、フランスやNZとも良い試合をした。後にサントリーでプレーしたグレン・エニスは、カナダ代表のスター選手だった。だが、その後はやや弱体化した印象が強い。いずれにせよ、カナダでラグビーがメジャースポーツになる可能性は薄いと思われる。

ひとつには、やはり気候の問題があるだろう。冬はプレー出来ない地域もあると思う。国技的存在であるアイスホッケーに、人材を奪われている面もあるだろう。


あとは、カナディアン・フットボールの存在も見逃せない。カナディアンフットボールはアメフトに良く似た、というかほぼ同じようなルールの競技なのだが、プロリーグであるCFLは現在でも根強い人気を誇っている。カナダが北米大陸の国である以上、米国のスポーツ文化と融合するのは半ば当然のことであったと思う。


でも、ラグビーの立場から見れば「カナダの国技がラグビーになっていたら...」と、ちょっと残念な気分になるのも確かである。国際ラグビー界の勢力地図は、かなり違ったものになっていたかも、と思うからだ。


本稿の初出:『楽苦美愛』 http://sns.rugbyeye.net/

2007年3月14日水曜日

人数で変わる競技の性格

ラグビーは何人でプレーするスポーツか。
「フィフティーン」という言葉があるように、1チーム15名でプレーする。

でもセブンスでは、1チーム7名でプレーする。半数以下の人数でやるわけだから、フィールドには広大なスペースが発生する。ラグビーはラグビーだから基本的には同一種目であることに変わりは無いが、しかし競技自体の性格はかなり異なるのは確かだ。ラグビーにあまり関心や知識が無い人の方が、そのことをより顕著に感じることが出来るだろう。

またセブンスほどメジャーにはなっていないけれど、10人制のゲームというのもある。私自身10人制の試合を生で見たことは無いが、「香港テンズ」なんてトーナメントもあるらしいので、地域によっては結構盛んなのかもしれない。
セブンスよりフィールドに三名増えることで、それだけより15人制に近い戦いになるんだろうか。

一方、ラグビーリーグは通常13名(フォワード6名、バックス7名)でプレーするのだが、やはりセブンスでの試合が存在する。それとは別に、9人制の試合も伝統的に行われていた。私はリーグのナインズも、残念ながら見たことが無い。

と言う事で、これだけいろんな人数のバージョンで試合をする団体球技も珍しいと思う。フットサルやバスケの3on3は有名だが、6人制の野球とかあまり聞いた事が無い。そして人数を減らした分だけ、その競技の性格がガラリと変わってくるのも面白いと感じる。

で、ここからが本題なのだが、なにをかくそう私は、ラグビーの1チーム人数が多すぎると昔から思っている人間である。もちろんラグビー自体は好きだし、15名の個性豊かな役割分担は面白いけれど、戦術と選手の運動能力が高度に発達した現在、プレーヤーは15名も要らない、というのが持論なのだ。それを言うと、たいていファンに総スカンを食らうからあまり発言しなかったのだが、ここでこっそり書いておこう。

かといって、セブンスだと少なすぎる。じゃ何名が適性人数かというと、それは11名だと思う。フォワード4名、バックス7名。
じゃテンズではダメなのかといわれそうだけど、むかし「テンメンラグビー」というとつまらないラグビーの代名詞みたいに言われて印象が悪かったので(意味が違うけど)一人増やす。7人制と15人制の中間だ。パワープレイもあり、バックスの展開ラグビーもしっかり存在する。机上の空論(妄想)では、これが適性人数だ。
サッカーは11名、アメフトもフィールド上には11名。イレブンというのは、フットボールにおけるマジックナンバーだと思っている。

従って私が国際ラグビー界を牛耳る立場の人間になれば、ラグビーはその日から11人制に移行すると思う。15人制のラグビーを守りたい人は、じゅうぶん気をつけておいてください。


<11人制の場合のポジションA>
1~4番 フォワード 5・6番 ハーフバックス 7~11番 バックス

フォワード内訳=1-3番はタイトフォワード、4番はルーズフォワード
スクラムはタイトフォワードのみで組む。
1,3番は「プロップ」。チーム最強の選手でFWプレー(モール、ラック、ゴリゴリと前進する時のラッシング)の核となる。ただしスクラムは3名で組む関係上、あまり重要性を持たないので「スクラム職人」的な選手はあまり必要では無く、走力が求められる。ラインアウトのジャンパー役も望まれるので、どちらかに長身の選手が最低1名は欲しい。
2番は「フッカー」。ラインアウトのスロワー。
4番は「ルーズフォワード」。いわゆるナンバーエイト的選手。

ハーフバックス=5番スクラムハーフ、6番スタンドオフ。
バックスは15人制とほぼ同じ。


<11人制の場合のポジションB>
1~5番 フォワード 6・7番 ハーフバックス 8~11番 バックス

フォワード内訳=1-3番はフロントロー、4・5番はバックロウ。
スクラムは5名で組む。この場合の「プロップ」及び「フッカー」は、スクラムの技術も必要になってくる。
4・5番は15人制のロック及び、第3列の複合型ポジション。

ハーフバックス=6番スクラムハーフ、7番スタンドオフ。
バックス=8番、10番はウィング、9番はセンター。センターは一名のみ。
11番はフルバック。


(本稿の初出:『楽苦美愛』 http://sns.rugbyeye.net/)


2007年3月12日月曜日

クリケットW杯開幕

先週末は何かと多忙で、結局ラグビーの試合を見ることが出来なかった。
レフリーのミスが勝敗を左右したイタリア対ウェールズ戦、予想以上の接戦となったスコットランド対アイルランド戦をはじめ、6ネーションズでは好勝負が多かっただけに残念だった。

さて他のスポーツに目を向けてみると、いよいよクリケットのワールドカップが開幕した。今回の開催地は、西インド諸島だ。

http://cricketworldcup.indya.com/

第1回大会が行われたのは1975年だから、ラグビーのW杯よりも歴史は古い。
今回の出場国を見てみると

豪州、南ア、スコットランド、オランダ、スリランカ、インド、バングラディシュ、バミューダ、NZ、イングランド、ケニア、カナダ、パキスタン、ジンバブエ、アイルランド、そして開催国西インド諸島連合となる。

http://cricketworldcup.indya.com/event/groups.htm

やはり英国のスポーツだけに、ラグビーとは盛んな国が被っていることがわかるだろう。豪州は過去2回の大会で優勝を飾っている。
ラグビーと違うところは、フランスやイタリア、アルゼンチンのようなラテン系の国が無い代わりに、インドやパキスタン、スリランカと言ったアジア系の国がけっこう多い。そして彼らは、世界のクリケット界でも大きな地位を占めている。

今週から4月28日の決勝まで、各国の威信を賭けた激しい戦いが繰り広げられることだろう。ただ陽気なカリブ海での大会だからか、全体的には陽気で開放的なムードの中、試合が行われるはずである。


ちなみに、私はシドニーを旅しているとき、偶然にもシドニー・クリケットグラウンドを発見し、そのままスタジアムへと入っていきました。すると試合(確か州代表同士による対抗戦)が行われており、なぜだか覚えていませんが無料で試合を観戦することが出来たんです。
そのときは、ルールはもちろん把握しておりませんでしたが、広大なグラウンドと開放的なムードが気に入って好きになりましたね。

ほんと、不思議な出会いだったと思います。



2007年3月6日火曜日

平尾の明と暗

神戸製鋼の平尾誠二GMが、来季から「総監督」も兼ねることになった。
この辺の名称と職務内容の違いは分かりにくいが、要は実戦での指揮を取るということらしい。


日刊スポーツは写真付きだ。やはり、平尾が動けばニュースになるということか。
思えば平尾ほど「カッコ良い」アスリートはいなかったと思う。日本ラグビー界を荷うプリンスとして颯爽と登場。伏見工、同大そして神戸製鋼と常に陽の当たる道を進み、日本代表でも主将として君臨。神鋼無敵のV7、宿沢ジャパンでの活躍と、平尾はここまでは最高の活躍を見せてくれた。ルックスも含めて、日本人アスリートとしての究極の姿を見せてくれたように思う。

しかし、いつも晴れの日ばかりではない。1995年に南アフリカで行われた第3回ワールドカップでは、代表に復帰しながらも結果を残すことが出来ず。この大会での日本は、NZに大敗するなど無残な全敗を喫し、世界との差が付いたことを痛感させられた。そしてこの辺から、平尾のラグビーロードにも影が差し掛かってきたように思う。神戸は以前のような強さを発揮できなくなり、切り札として就任した代表監督でも、1999年ワールドカップでは全敗。平尾プロジェクト、2011年ワールドカップ招致などでも、結果を出すことが出来なかった。

もちろん、これらの全てを平尾の責任にすることは出来ない。しかし
「平尾がいれば勝てる」「平尾がなんとかしてくれる」というような頼もしさと、彼の持つ勝ち運みたいなものが、だんだんと消えていったように見えたのも確かだ。
そういえば「日本型思考法ではもう勝てない」といタイトルの本を以前に出していたが、なんとなく「日本のラグビーはもう勝てない」、あるいは「平尾ではもう勝てない」などという風にも読めて、なんとも寂しく思えたものだ。
先日の「ナンバー」ラグビー特集でも登場していたが、その横顔が寂しそうに思えた。

自ら黄金時代をもたらせた神鋼にもう一度栄冠をもたらし、そして平尾自身もかつての輝きを取り戻してくれることを期待する。


2007年3月2日金曜日

PG、FG、FT...

ラグビーの日本選手権決勝では、PGの成否が勝敗を決したようだ。
日頃は決められる距離・角度からのキックでも、プレッシャーのかかる場面では外してしまうことがある。

神戸製鋼と日本代表でプレースキッカーとして活躍した、フルバック細川隆弘選手の言葉だったかと思うが、ゴールキックは試合によって完璧に入るかと思えば、ぜんぜん決まらなかったりする。同じ選手がキックしているのに、どうしてこんなことが起こるのか、という質問に「ゴルフのパットと同じですよ」と答えていた。なるほど、そんなものかもしれない。ほんの少しの迷いが、手元を微妙に狂わせ、結果として大きくカップを外してしまうのだ。

これは、何もラグビーだけじゃない。たとえば、アメリカンフットボールのフィールドゴールもそうだ。アメフトの場合は、センターからスナップされたボールをホルダーがしっかりとキャッチしてプレースし、それをキッカーが蹴りこむ。皆の息が合わないと上手くいかないという点では、ラグビーより難しいかもしれない。誰かが心を乱してしまっては、決められるはずのゴールを外してしまう。
プロの最高峰であるNFLのプレーオフでも今年、ホルダーがボールを上手く捕球できず、フィールドゴールを蹴ることすら出来ずに敗れ去った場面があった。

バスケだと、フリースローだろう。相手からの妨害も無く、練習ならほぼ完璧に決まるはずなのに、これがビッグゲームだと途端に入らなくなってしまう人がいる。相手選手は妨害しないのだから、自分の心さえ平静ならば、試合でもかなりの確率で決めることが出来るはず。なのに、2本とも外してしまうこともある。
スポーツはメンタルが最後の勝敗を分ける、だから面白いのだ。



My Winding Path to English Mastery